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表情を変えないユーディー姫様より、第五女と言ったことが気になって困惑してしまった。なぜなら、ナンデイーブ領の第五女は『わたし』なのだから。
たしかユーディー姫様は、わたしより一歳と半、年齢が上だったはず。
初めて出会った姫様にそう頭を悩ませたのだった。
ユーディー姫様が十字架に吊るされていた理由を、ウィゼールが一生懸命お母様に説明している。
魔術の鍛錬で、ウィゼールが姫様に魔術で攻撃させていたらしい。十二分の一の刻の間に、ウィゼールへ泥をつけられれば姫様の勝利だと言う。出来なければお仕置きがあったらしい。
その勝負ごとに負けてしまったユーディー姫様は十字架に吊るされ、お仕置きを加えるところだったとウィゼールが話す。
「魔術の鍛錬とはいえ、姫様にお仕置きとは感心できません」
珍しくお母様の語気が強く、ウィゼールがおろおろと焦りを見せている。
「いえ。違うのですオルテナ夫人。お仕置きという名の戯れと申しますか……」
「一体、なにをするつもりだったのですか。ことと次第によっては、ユーディーの魔術の師だとはいえ、それ相応の罪の覚悟もしなさい」
「あああのですね。お仕置きというのは『こちょこちょの刑』と申しまして……」
こちょこちょ? わたしとお母様はお顔を見合わせ、恥ずかしそうに語りだすウィゼールに首を傾げた。
真っ赤に染めた面(おもて)を両手で隠すウィゼールに、お母様が唖然となっている。その背後で、彼女の説明にわたしは思わず吹き出してしまった。こちょこちょの刑って。
それが、今まで出会ったことのない不思議な二人が気になり始めたきっかけだった。
第一夫人とお母様は火の魔術使い。
お城へ行けば、水の魔術使いが庭園でお仕事をしているところを見たことがある。
でも、土の魔術使いを見かけたことがない。
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