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「土の魔術は必要な要素を土の中から集めるのです。そして今はその要素から花に必要な養分だけを周りの地中から集めている作業をしているのです」
その話にそこはかとなく納得する。
「火や水の魔術と違い、土の魔術とは地味な魔術なのです」
「でも、土の魔術でも攻撃魔術はあるのですよね」
わたしの問いにウィゼールが応える。
「はい、ございます。しかし、どちらかといえば、防御のほうが効果的ですが」
土は火を通さず、水を吸収するかららしい。でも、今の平和な世にあまり必要がないと言う。
「ペネシア姫様はトイレで排出物をだされますよね」
そのような恥ずかしい質問を促され、返答に困ってしまいお母様の傍で身を縮こまらせた。
すると桃色の瞳をニヤリと細めた彼女が話を紡ぐ。
「どのような美しい方でも、お偉いお方でも、生きていれば排出物を出します。それを水で流したあと、どうなるかご存じですか?」
そのようなこと気にしたことがない。わたしは黙って頭を振った。
「それらは土の栄養分となるのです。そして、それらを処理することがワタシたち土の魔術使いのお務めですわ」
人が出した用を処理? 信じ難く、思わず汚いものを見たような顔になる。
「火や水の魔術のように派手で、煌びやかではありません。しかし、それらを使って田畑を潤すことは土の魔術使いにしか出来ません。水の魔術が経済を潤すと言うなら、土の魔術は生活を支えているのです」
自慢げに話をしているけれど、頭から用の処理という言葉が離れず、なんとも言えない表情のまま、話半分で聞いていたのだった。
お屋敷に籠っていることがほとんどだったわたしは、ユーディー姫様たちと出会ってから散歩に出かける日々が続いた。でも、第三婦人の敷地近くへ行っても二人に会うことがなかった。
そうなるとますます気になっていく一方だった。
「お母様。急ぎましょう」
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