187話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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 出会った時より早い時間にいるのかも、遅い時間にいるのかも。そう時間を少しずつ摺らして散歩へ赴いた。  そんなある日――今日もいないわ、とがっかりしていた時だった。なにやら声を耳にしたのだった。立ち止まってあたりをきょろきょろと見回してみる。 「姫様。逃げるのではありません。アースウォールで防ぐのです」  と、ウィゼールがユーディー姫様を追い回す二人が現れたのだった。 「ウィゼールが追いかけてきたら集中できません」 「そうならないように素早くイメージするのです」  ドレス姿で敷地を走っているユーディー姫様。まさか姫様が走り回るなんて。普通なら姫様の立ち振る舞いとしては、不品行だと怒られるのに。そう目をぱちくりと瞬き、驚いてしまった。 「お母様」 「あらあらウィゼールったら、なにをしているのかしら」  わたしが二人を指さすとお母様が呆れている。すると、ユーディー姫様が転ぶのが目についた。 「大変ですわお母様!」  我を忘れ、お母様の服の裾から手を放し、倒れこんでしまっているユーディー姫様のもとへ急いだ。 「逃げ回っていては、いずれ体力も、精神力も、集中力も落ちてこのように怪我をするか、攻撃を受けてしまいます。そうならないように防御をするのです。そのための練習です。おそれずにアースウォールを使ってください」  そうウィゼールがポーションでユーディー姫様の治療をしている。  大丈夫ですか――と近寄るとわたしに気がついた二人が、慌てて跪いて挨拶をしてくれる。そのようなことよりユーディー姫様のドレスの汚れが気になって仕方がない。しかも、ユーディー姫様はわたしより年上のお姉様なのだから、毎回跪くことはやめて欲しい。本来なら、年下のわたしのほうが首を折って挨拶をしなければならないというのに。  目の前の二人に腰を上げてもらい、身なりを整えてもらうようにお願いした。
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