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「今から休憩にしてお茶にしようかと思っているのですが、時間があるようでしたら、ご一緒にいかがでしょうか?」
少し遅れてお母様が到着するとウィゼールがそう誘ってきた。
貴族の女性は、五歳になるとお茶会の立ち振る舞いについて教えられる。七歳の儀式が終えるとお務めで必要となるため、女性としてお茶の嗜みはとても重要な事柄なのだ。
でも、儀式のあとわたしはお屋敷から出なくなったので、まだ正式なお茶会には出席をしたことがない。いつも教わっているお母様と練習を兼ねてしているぐらいだった。そのため、本当のお茶会に少しばかり興味があった。
わたしはお母様へ目を向けてみる。返ってきた微笑みは、わたしの気持ちが通じたみたい。
「ちょうど喉が渇いたと思っていましたの。ご一緒させて頂けますか? ユーディー」
とお母様が承諾を取ってくれた。
わたしの知っているお茶会は、お部屋を綺麗に飾り付け、用意できる最高のお茶とそれに合うお茶菓子を用意して楽しくお話しするものだった。
でも、その常識を覆させられた。
勧められた席は、第三婦人のお屋敷の外の日影で、簡易なテーブルとイス。しかも戸惑いを隠せられなかったのは、側仕えや付き人は姫様の隣にいるはずなのに、ウィゼールはわたしたちと一緒に腰を落ち着かせているのだから。
「申し訳ございません。このようなお茶菓子しかご用意できませんで」
と、ウィゼールはユーディー姫様がテーブルに置いてくれた、パンの耳を揚げたものに木イチゴのジャムをつけてつまみ始めるしまつ。毒見をしてくれているのかしら?
どうぞどうぞ――と勧めてられるけれど、勝手の違うお茶会に躊躇ってしまう。
「どうですか? 青い空、色とりどりの庭園、視界を遮らない解放感。心が休まりませんか?」
戸惑っているわたしとお母様に気がついたのか、ウィゼールが屋敷の周りに咲き乱れているお花たちを指す。
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