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つまり、ほっておいても向こうから俺に声をかけてくるということだ。
これから歩む人生と比べると、なんとも楽な人生だ。断る理由などない。
そういうことで即座に了承した。すると突然目の前がブラックアウトしたかと思えば、眩しい光が襲い掛かってきた。
気づけば、歩道の真ん中を歩いていたのだ。目の前にはヘッドライトの光が。いわゆる夢遊病ってやつだったのか?
人生が詰んだ、そう思った。
でも、一瞬の痛みを感じたあと、田畑に囲まれたあぜ道に突っ立っていたのだった。
それが第二の人生の始まりだった。
イストレア領の農村地域に転生してから二日目には、魔力を持っていることに気づき、城に招かれた。神様が言っていたように俺を必要として、あれよあれよと人が集まってくる。
五日もしないうちに、全属性の魔術と白魔術を使える僕の名は国中に広まった。この世界では魔力を持つ者が敬われ、優遇されるのだ。
そうして、神様よって転生してきた俺はイストレア領の城での生活が始まった。なにもしなくても衣食住が与えられた。誰もが俺のことを敬い、敬語で話しかけてくる。ちょっと魔術をお披露目すれば誰もが賞してくれる。無理さえ言わなければ、なんでも聞き入れてくれる。
なんて素晴らしい世界だろう。さすが俺を必要としている世界だ。そう楽しくて仕方がなかった。
しかも魔術を使って魔王を倒すなんて使命がない。そもそも魔王が存在しない世界なのだ。つまり、命の危険はない。なんて楽な世界なんだろう。
「勇者とはどのような者なのですか?」
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