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「忘れているものはなかったかしら」
「お茶菓子も届いています。ワゴンにはすべて揃っていますよ」
手慣れた手つきでわたしの黄金の髪を三つ編みにしながら、微笑みを作って気持ちを落ち着かせてくれた。
「見て、ペネシア。とても綺麗よ」
鏡に映る長い髪は、お茶を点てる時に邪魔にならないように頭の上でまとめられている。薄く化粧もしてもらい、唇には紅をつけてもらった。
「こうして娘のお茶会を見送ることが出来る日がくるなんて」
そう。普通ならお務めの時に女性はお茶会に誘われたりするのだけれども、わたしにはそういったことがなかった。
お務めの挨拶が終わると、いつも難しいお話をしている大人たちの横に立って居なければならなかったから。その間、じろじろと見られながら商談している。苦痛な時間だった。一緒に出席してくれているお母様もとても辛そうだった。
でも、今日この日を迎えて、お母様はとても嬉しそうな表情をしている。
わたしが立ち上がって出来栄えを見せようとすると、背筋を伸ばすように注意されてしまった。その顔はすごく幸せそうだった。
お茶会の時間が近づき、玄関の扉の前で椅子に腰かけてユーディー姫様の到着を待っていた。
立っているとうろうろと動き回り、ドレスや結った髪が崩れてしまうからとお母様に言いつけられていた。
手指をせわしなく弄んでいると、外からベルが鳴らされた。
「ユーディー姫様が訪問の許可を求めていますが」
すぐに通してちょうだい――そう飛び上がろうとしたわたしをお母様が制する。
「許可を出します。丁重にお連れしてください」
「かしこまりました」
その返答のあと、別の声が語りかけてきた。
「ユーディーです。入館の許可をお願い存じます」と。
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