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そう促すと、手元にある箱からカップを並べ出されたものを手に取った。ユーディー姫様の髪の色と同じ緑色のカップの縁には金色が彩られていて、とても可愛らしい。
落とさないように。カップとソーサ―が音を鳴らさないように。ゆっくりと歩く。
ポットに湯を張り、温めると、一旦湯を捨てる。次に茶葉を入れ、再び新しい湯を張り直す。茶葉が開くまでに、湯でカップを温める。
ここまでは順調だった。
布の乗った取り皿を手に、わたしは再びテーブルに歩み、椅子に腰かける。毒見という名の試食をするために。
テーブルに布を置く。するとそこにスコーンは乗せられることがなく、選んだものはユーディー姫様自身の取り皿に乗せられた。
「あのう。試食を」
教わっていた順序が違い、少し慌てて声をかける。
「ペネシア姫様からのお茶菓子ですから、なにも問題はないと思います」
「しかし……」
お母様との練習の時はいつも毒見をしていた。その教わった作法と違い、こういう時はどうすればいいのかしら? 戸惑いを隠せない。
すると、ユーディー姫様がスコーンを手でちぎり、桃のジャムをつけて食し始めてしまった。お茶菓子を口にするのは、お茶が揃ってからだというのに。ますます困惑する。
「とても美味しいですわ。あ。わたくしとしたことが、つい、お茶を待てずに」
口元に手を添えるユーディー姫様の言葉にハッとした。
そうだわ。お茶。そろそろ茶葉が開いているのでは? そう席を立った時、椅子から優雅なお茶会らしからぬ音を立ててしまった。
いけない。落ち着いて。そう言い聞かせ、ワゴンへと歩むと、お母様がカップ中の湯を捨てていた。でもそれは、わたしがすべきことだ。付き添い役のお母様がそれをしているということは、時間が押しているということだ。
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