188話 よくある 閑話? 閉じこもり姫の苦悩

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 もし、あそこで試食をしていたら――テーブルの上にはジャムがいくつもある。それを一つ一つ毒見をしている時間はなかったことに気がついた。  ごめんなさい――そう小声で声をかける。  落ち着いて――お母様のその囁きに頷き、カップを拭く布を……  お母様が、本来わたしが立つ位置にいる、ただそれだけなのに、いつもと勝手が違い、いつもの布がどこにあるのかわからなくなってしまった。  オロオロとしている間に、お母様がカップを拭きあげてくれる。  茶漉しはどこだったかしら――とキョロキョロとして、やっとみつけたものを手にしかけて、手を止めた。  その前に茶葉を旋回させなければ。  急いでポットを持って、空いている手のひらの上で三度、回すように揺する。  そうして出来上がったお茶はカップに注ぐと色が濃く、わたしの顔から血の気が引いた。  ちらりとお母様へ目をやると首を振っている。失敗だ。すぐに入れ直さなければ。 「ユーディー姫様。大変申し訳ございません。すぐにお茶を入れ直しますのでしばらく――」  お待ちになってくださいペネシア姫様――と、わたしの謝罪を遮り、ユーディー姫様が席から立ち上がった。  わたしの傍に近寄ってくると、失敗したお茶を見て、何事もなかったかのようにカップを手に取る。 「さすがよい茶葉です。いい香りがしますね。捨ててしまうのは、もったいないですわ」  しかし――そう言いかけたわたしに首を振る。 「ウィゼール」 「はい」  今まで静かにユーディー姫様の背後に立っていた彼女は頷くと、心配そうにしていたお母様の元へ歩み、なにやら話し込むとお茶室から二人とも退室してしまった。 「ペネシア姫様。これをポットの中へ戻してください」  と、手にしていたものを手渡してくる。  一度注いだものを? 不安げにユーディー姫様へ目を向けてみたけれど、にっこりと笑っている。
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