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失敗したものを戻すなんて――そう気兼ねしつつ、言われた通りにゆっくりと中身を移した。
「では、そのポットにもう一匙、茶葉をお入れください」
「それでは更に濃くなってしまいますわ」
「はい。しかし、大丈夫ですわ」
得意げな笑みに不安が隠せないでいると、扉が開き、お母様たちが戻って来られた。
困惑しているわたしを見て、お母様が首を傾げ、ユーディー姫様の言われた通りに茶葉を追加すると目を丸くしていた。
「姫様。用意してきたミルクです」
ユーディー姫様はウィゼールからミルクポットを預かると、なんと紅茶ポットの中に注ぎ始めてしまわれた。
「姫様。こちらを」
今度は魔法陣が描かれた紙を受け取り、ポットに貼りつける。すると、しばらくして注ぎ口から湯気が出始めた。それを待っていたかのように、ユーディー姫様は紙を剥ぎ取り、破り捨てると、茶漉しを手にお茶を注ぎ始めた。すると、なんてことでしょう。カップにはミルク紅茶が出来上がってしまった。
「立ったままで品が悪いですが、味を見てもらえますか」
ユーディー姫様に頷き、カップを手に口を添えてみる。
美味しい! そう思わず驚いた。
紅茶にはミルクをたっぷり入れるわたし。いつも少し冷えてしまい、紅茶の味が薄れてしまう。
でも、このミルク紅茶は温かく、しかもしっかりと茶葉の香りとコクがついている。それでいて、とてもまろやか。今まで飲んでいたものとは段違いに美味しい。ここに蜜をいれて早く飲んでみたい。
「いかがですか?」
「素晴らしいです。このような紅茶を飲んだことがありません」
「喜んでいただいて嬉しく存じます。茶葉を作ってくれた方々も、捨てられずに喜んでくれるでしょう」
「作ってくれた方々?」
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