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「はい。この茶葉は人々の手によって作られています。茶葉を育て、剪定し、乾燥させるのです。瓶詰では感じられませんが、それはたくさんの葉っぱが使用されています」
考えたこともなかった。茶葉が人の手で作られているなんてことを。
ユーディー姫様の話にハッとして、薔薇の紅茶が思い出された。
ユーディー姫様はその作業をしてあのお茶を出してくれたからこそ、茶葉づくりの大変さを知っているのだと思う。
昨日はお母様と何度もお茶点ての練習をした。いい加減飲み切れず、なにも考えずに捨ててしまっていた。なんてことをしてしまっていたのかしら。そう罪悪感に苛んでしまう。
「ペネシア姫様。わたくし、喉が渇いてきましたわ。お茶会を再開いたしましょう」
と、ユーディー姫様が席に着き直す。
わたしはお茶をトレイに並べ、カップをテーブルに並べると自分も椅子に腰を下ろした。
本当なら主催者のわたしが会話を盛り上げなければいけないというのに、先ほどの失態から調子が崩してしまっていた。代わってユーディー姫様が話題を持ちかけてくれる。
さすがお姉様。手慣れていらっしゃる。
話の内容も感心することもあれば、失敗談も織り交ぜて楽しませてくれる。落ち込んでいたはずなのに、つい笑みが零れてしまう。
時間も経ち、気分も和らいだころに、お茶室の外が騒がしくなってきていることに気がついた。このお屋敷には、特定の人以外は許可なく立ち入ることは出来ないはずなのに。
なにごとかしら――そう会話が止まり、部屋にいる四人でお顔を見合わせたその時だった。
突然、勢いよく扉が開いたのだった。
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