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わたしはそのような話は聞いていない。と、ふとユーディー姫様と初めての出会いを思い出した。姫様が言い間違えたのだと思い込んでいたわたし。『お姉様』は五女と名乗っていた。しかも、いつもわたしの前に跪いていた。
察するに跪いてるユーディー姫様は知っていたということだわ。一体、『妹』であるわたしにどのような気持ちでずっと跪いていたのかしら。
「ユーディー! あなたも知っていたはずです。ペネシアが今回初めてのお茶会だということを。なのに、妾の娘であるあなたが出席するということは、おこがましいとは思わなかったのですか?」
恥知らず――と、汚いものを見るような表情を、なにか思いついたように一変させたグローリ妃様が鼻で笑われた。
「もしや、自分のお茶室に来るはずだった家具でも見に来たのかしら? 女々しい娘ね」
その言葉に疑問符が浮かぶ。
どういうこと? 家具?
わたしはお茶室の調度品を見渡す。
それはわたしが五歳の時に届いたもの――ハッと気づいて息を飲んだ。
つまりそれは、ユーディー姫様が七歳の時ということ。つまり今のわたしのように、その歳は初めてのお茶会の催しがされる年齢だわ。
初めてお茶会にお呼ばれしたユーディー姫様とのお茶会は、野外で行われた。それって、もしや、ユーディー姫様のもとにはお茶室が――。
お母様! ――と、わたしがなにを言おうとしたのかわかってくれたらしく、ゆっくりと話してくれる。
「四女であるあなたのお茶室に家具がないのに、ユーディーにお茶室があることは不自然だと。グローリ妃様が気を利かせていただいてくれたのよ」
そんな――跪いているユーディー姫様を見下ろすと、悲痛な気持ちが湧いてくる。
本当ならユーディー姫様自身の家具なのだと知っていてなお、わたしのお茶室を褒めてくれていたということ? でも、その微笑みには嫌味も妬みも感じられなかった。
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