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そう。わたしにはわかる。あの忌まわしき七歳の儀式を境に、人の笑みからその人の感情が感じられるようになっていたのだった。
あの日、押し倒され、迫る子どもたち。その笑みには灰色かがったものが薄っすらと浮かんでいた。それは喜色悪く、気味が悪く、気持ち悪いものが感じられた。それはおそらく欲望というものだと思う。
その出来事以来、わたしに向けられる笑みには色が感じられるようになっていた。
お母様の微笑みからは暖色に似た温かみのあるものが見える。
綺麗だ――そう言う人たちからは、たいてい、どす黒い色が纏わりついている。たぶん、強欲や色欲、妬み、そのようなものが入り交じっている。それを見るたびにいつも気分が悪くなっていた。
でも、ユーディー姫様からはいつも、まばゆい色が見えていた。おそらくそれは、噓偽りのない本音の笑みなのだと思う。だって、気持ち悪くならないどころか、安心できるものだったのだから。
なのにわたしは知らずとはいえ、自慢げな振る舞いを取ってしまっていた。
「さあ。ペネシア。ワタシたちの塔へ行きましょう」
「え?」
「あなたの初めてのお茶会の仕切り直しをいたしましょう。娘たちも喜ぶわ」
そう向けられた笑みは濁った色を感じる。それは妬みや嫉妬の色だ。
わたしはお顔を逸らし、断りを入れることにした。
「しかし、今はユーディー姫様と――」
「わたくしたちは構いません。気になさらないでください」
と、隣で見上げてくるその笑みからは、まばゆい色が見えている。
その光景を一蹴するかのごとく、グローリ妃様が罵声を上げた。
「なにを図々しい。そもそも妾の娘が第二夫人の敷地に足を踏み入れるなんて、恥ずかしくないのかしら」
申し訳ございません――と雑言にユーディー姫様が頭を下げて詫びを入れる。
「オルテナ。早くしなさい。あなたが足を進めなければペネシアも動かないでしょう」
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