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希望を入れる
昔々、とある女が神から授かった箱を開け、中に入っていた災いを世に解き放った。
「けど、箱の中には残っていたものがあったんだ」
父はそう語る。私は首を傾げた。
「それが、『希望』?」
「そうだ。だから今、私はこうして希望を抱えていられるんだよ」
父はその穏やかな気性を体現するかのように穏やかに微笑み、膝の上の私を抱きすくめた。
――その父の腕は今や筋張り、棺の中で花に埋もれている。
「おじいちゃん、これで寂しくないね」
娘が背伸びをして棺の中へ花を置く。綺麗な花が一つ、箱の中の父を彩る。
「お花がいっぱい!」
そうだね、と私は言い、娘を抱き上げて棺の中を見下ろす。
たくさんの花に包まれた父は微笑んでいるように見えた。
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20211204
Twitter300字ss お題「箱」
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