3人が本棚に入れています
本棚に追加
滴る
こぼれ落ちていった。
「ずっと内緒にしてたんだよ」
その口の端から、こぼれ落ちていった。
「でもね、もう、我慢ならなくなったの」
ぽたりぽたりと、一粒ずつ、やがてぽろぽろといっぺんに。
「ずっと気になってたの。ほんとはね、ずっと見てたし、聞いてたんだ。だから今何してんのかなとか、何考えてるのかなとか、何時に帰るのかなとか、いろんなこと気になってたの。でもこれ、良くない気がして、言うのだけは我慢してたの。今まで、今の今まで、ずっと」
思いというしずくはやがて雨粒になって、雨になって、ざあざあと降り注いで私を濡らしていく。滴る、滴る、髪の端から、肌の上から、下へと滴る。
滑り落ちていく。
「でも我慢しきれなくなっちゃった。言わなきゃいけなくなっちゃった。ごめんね、ごめんね、あやちゃん」
みいちゃんが泣いている。ぽとぽととしずくをこぼしながら泣いている。
「あやちゃんがたっちゃん殺したこと、お巡りさんに話しちゃった。ごめん、ごめんね」
滴る、滴る。みいちゃんの内側から真実が、私の内側から冷や汗が。
――滴る。
-----
20220704
文披31題 Day4「滴る」
企画主催:綺想編纂館(朧)様(https://twitter.com/fictionarys)
最初のコメントを投稿しよう!