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星渡り
人の中には宇宙がある。人は体の中の宇宙を消費して生きている。そして死に際に残りの宇宙を体の外へ放出して流れ星となり、宇宙のあちこちの星を、かつての知人を訪れる。だから内側の宇宙を解き放って空を飛ぶことを私達は「星渡り」と呼ぶ。
幼い私は宇宙を飛んでいた。内側から溢れる瑞々しい宇宙が星々を含んだ空気諸共私を吹き飛ばしていく。行く先に母がいた。流れ星となった母を追いかけて、私は星渡りをしていた。これが死に近い行為だとわかっていた。
「お母さん!」
突然、体が強く後ろへ引っ張られた。父だ。父が私を星渡りから引き戻している。伸ばした手は母に届かなかった。
――ありがとう。
遠のく星の光から、母の声が聞こえた。
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20220903
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