神に祈る

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神に祈る

 神社巡りが好きだった。数ヶ月に一度京都に行っては徒歩であちらこちらを訪れた。けれど何を願う気もなかった。合格も結婚も健康も未来も、他者に願うほどのものではなかった。  なら、と私は求めた。  私一人ではできないことを。神様だからできることを。  けれどいつも、何事もなく本殿との往復を終えてしまう。戻ってきてしまう。鳥居の外に、この世に、アスファルトの上に。願っても願っても、どこの神社も私の願いを叶えてはくれなかった。  ――ああ、駄目なんだ。  以降、私は神社へと赴くたび、静かに手を合わせている。 「この地とこの地の人達に良いことがありますように」  曖昧で、薄い、私の祈り。  これならば神様は叶えてくれるだろうか。 ----- 20220205 Twitter300字ss お題「祈」 企画主催:Tw300字ss様(https://twitter.com/tw300ss)
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