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投身自殺
雨が降っている。水溜まりの中に水が落ちていく。いっそ一度に落ちて仕舞えば良いのに、何故か水の塊は千々に散って各々の好む時機に地へと衝突していく。地へぶつかって、弾けて、砕けて、きっとそれが血の赤を持っていたのなら悲惨な光景がそこにあったことだろう小さな衝撃音と共に殊更細かな粒となる。
幾つもの粒が潰れて形を失う。けれどそこに赤はない。青もない。背景を透かす無色がひたすらにばらばらと落ちてくるだけ。
雨が降っている。赤を宿さない死が繰り返されている。人はそれを心地良いと言い、美しいと微笑み、楽しむ。ならきっとそうなのだろう。
傘の向こうの空を見上げる。たくさんの投身自殺を眺める。
雨はまだ止まない。
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20210624
過去作再掲
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