居眠りコナンはシャーロックになれない12 友情と開かずの金庫―踊る人形より

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 俺たちはやっとのこと受験も終わり、後は合格発表と卒業式を迎えるだけとなった二月のある日。  去年は日向先輩たちと、校長の事件を解決したことにみんながわいていたんだなんてしみじみ。    花壇は綺麗になり、クーラーボックスが埋められていた場所の上には訳の分からない青春と書かれた碑が置かれ、話を知っているのは俺たちと二年生だけではあるが、そんな話さえ消えつつあって七不思議は作られる間もなく消えてしまったと言ってもいいだろう。 「早く写真の確認しろよ」  学級員長センタの声が響いていた。廊下をバタバタと走ってくる足音にみんなが注目した。  ガラッと扉が開いた。  「中村、ちょっと」担任ではない、一年の英語教師がやってきた。  「俺?」  ざわめく教室、みんながどうしたのと聞くが俺にはなんとなくわかった。 廊下に呼ばれると、あいつはすぐに教室へ入り、荷物を持った。 「センタ悪い、後頼む」 「どうした?」 俺は雄一のそばへ行くとカバンを持った雄一が肩を叩いた。 「ばあちゃんの具合が悪いんだ、わり―な」 つぶやくような小さな声でそう言った。 そうか・・・。 おう、じゃな。  雄一のおばあちゃんは痴呆もあって、家族が大変な思いをした。両親も雄一も付ききりで、それでも受験した奴には敬意を称したい。好きなバスケ、怪我もそうだが、すっぱりとやめ家族の面倒をみた三年間だった。 「一馬、できたか?」 「あ、ああ、これ頼む」  雄一のも頼んでいいか?お前なら、文句も言わないだろう。  変なの選んじゃおうぜと言うダチに、そこは、ちゃんとしてあげなよと言う女子。 怖いから女子の言う事を聞きましょう。 俺は女子に背中をバンバン叩かれた。  そうそう、ここは聞いておいた方がいいよというセンタに男子たちもゆうことを聞いた。センタとは去年あの事件がなければ話しかけることもなかったし、こうして馬鹿を言えるほどいいやつだとは知らなかった。 クラスで一番頼りがいのあるやつセンタは三年間学級委員をやり通した、俺は尊敬するし、できた親友の一人でもある。 そしてみんな大人になった、体つきもそうだが、髭もはえてきている奴もいる、見渡せば、入学した時よりずっと大きくなった仲間がいるのだ。 「できたらもってこい、早く帰れねえだろうが!」 「センタがそう言うの珍しいー」 デートだ、デート、と茶化す男子。 「悪いか!」 それにクラスがしんとした、真っ赤になるセンタに・・・ 「「「うっそー!」」」    皆が大声でそう言ったのは間違いない。  知ってる俺はハハハと笑うしかなかった。  俺、山岸一馬(やまぎしかずま)、東京の端にある、とある町のクニマチ高校三年生。親友、中村雄一(なかむらゆういち)とはこの学校に入ってから仲良くなった。  去年の七月、俺んちの近所で殺人事件が起きた。たまたま現場を通りかかった俺はある警官に目を付けられてしまった。同級生、真壁仙太郎(まかべせんたろう)遠藤(えんどう)はるみを引きずり込み、シャーロキアンである一年先輩の日向(ひゅうが)智明(ともあき)と共にBaker Street Irregulars、少年探偵団としていいように田神警視に使われ、事件を解決してきたのだった。 いつも事件は生活の中に関係している。もちろん犯人とは面識はないし、俺の側で起きているというわけではない。ただ、新聞を見れば、何かで結びつくきっかけみたいなものはある。それを逃すか逃さないか。俺にとっての図書館で何気に読む新聞は、大事なものだった、特に近辺で起きている何気ない話、それがドデカイ事件につながってきていた、只それだけかな? そしてこの後大事な親友の一人、中村雄一の家で起きるちょっと変わった事件がこれから起きようとしていたんだ。
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