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 北灯の突然の告白に僕は言葉を失った。店内の暖房が稼働する音が聞こえる。  脳が回らない。何も考えられない。自分は今何も考えられていないということしか考えられていない。展開の速さに頭が真っ白になっていた。 「ねえ聞いてる?」 「え、あ、うん」  ……そうだった。何を驚いているんだろう。  彼女は僕とは違い、即断即決だ。  今日の注文の際も一切の迷いなく「ポテトください。メガ盛りで」と言い放ったじゃないか。僕はまだメニュー表も開いていないのにだ。「全部食べられるの?」と訊くと「私が食べられなかったら豊城くんが食べればいいでしょ」と即答されたので僕は開きかけたメニューを閉じた。  とにかく彼女の決断は速い。  そんな彼女が僕を好いてくれたのだとしたら、その先の行動ももちろん即断だったはずなのに。 「……返事、もらっていい?」  テーブルの上にポテトはもうない。真っ白な皿が置かれているだけだ。彼女の視線はすべて僕に向いている。  よろしくお願いします。そう言えばいい。僕も北灯のことが好きだからだ。  そうすれば晴れて彼女と付き合うことができる。好きな人に好かれていることほど嬉しいものもないはずだ。  なのに、どうして僕はこう答えてしまうのだろう。 「もう少しだけ考えさせてください」  僕の返答を聞いて「豊城くんならそう答えるかもって思ってた」と彼女は苦笑しながら頷いた。 「じゃ、今日は帰ろうか」  北灯は鞄を持って立ち上がる。その声は本当にいつもの北灯の僕も遅れて立ち上がった。時計の針は五時四十五分を指している。  伝票を持ってレジに向かいながら、僕はどうしてあんなことを言ったのか考えていた。
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