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「うわ、寒いね。もう冬だ」
ファミレスを出ると、日はすっかり落ちて夜の様相を呈していた。店内とは別世界のような空気の冷たさに北灯は両手を擦り合わせながら白い息を吐く。
「じゃあまた明日学校でね」
「ああ、また明日」
どうして僕はあんなことを言ってしまったのか。
小さな背中を見送りながら、僕はようやくその答えに辿り着いた。
どういうわけか「自分から告白したかった」と思ってしまった僕がいるからだった。
何を言ってるんだと自分でも思うが、そう思ってしまったものは仕方ない。本当は僕が彼女に告白するつもりだったのだ。そのための練習やシミュレーションを何度も重ねてきたのに。
けれど今更何を言っても時間は食べ終えたポテトフライのように戻らない。僕がもう少しだけと言っている間にすべて無くなってしまった。だから尚更その思いが強まる。
彼女の告白はもちろん嬉しい。
けれど、それ以上に悔しいと思ってしまったのだ。
もう少しだけ、僕の判断が速ければ……!
「――え」
それを理解したのは唐突だった。
何がどうなったのかわからない。神様の気まぐれかもしれないし、僕の強い思いが奇跡を生んだのかもしれない。
僕に超能力が目覚めていた。
まるで夢の中のように自分にはどんな能力が宿っていて、どうすれば使えるのかも不思議と分かっている。
僕はすぐに、いややっぱり少しだけ考えてからその能力を使った。
効果音も演出光もない。ただただ目の前の景色が変わっただけだ。
いや、変わっていないだけだった。
「ポテトってさ、もう一本だけもう一本だけって思いながら摘まんでたらいつの間にか無くなってるよね」
――四人掛けテーブルの中心には、残り三分の一ほどになったポテトフライの山が置かれていた。
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