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6
「ポテトってさ、もう一本だけもう一本だけって思いながら摘まんでたらいつの間にか無くなってるよね」
「そうだな。だがこのポテト、底のほうはまだ熱が残ってる。つまり熱々だ。今このポテトに触れるということは熱した油に指を突っ込むことと変わりない。だから一度手を止めよう。僕は君の指をカラッと揚げてほしくないんだ」
「いやでもそれで冷めちゃったら美味しくないでしょ。一度頼んだからには最後の一本まで美味しくいただくのが注文した者の責務よ」
北灯はそう言って何の躊躇もなくポテトに手を伸ばす。ポテトの山はいつもと変わらないスピードで小さくなっていく。
くっ、これもダメか。彼女のポテトへの執念と責任感を侮っていた。また他の策を考えなければ。
「早く食べないと無くなるよ?」
彼女の声を耳で捉えながらも僕は思索に耽っていた。
ここまで何度も能力を使ったが、僕はこの能力を完全に理解しているとはいえない。
時間を戻せることはわかっていても、どれだけ時間を進めても戻ってこられるのか、回数制限があるのかもわからない。
もしかすると次で最後かもしれない。
そう思えば、いつまでもだらだらと先延ばしにはできない。
「あ、そういえば話があるんだけど」
僕はもうテーブルを見なかった。
そこに欠片一つない真っ白な皿が置かれていることはわかっている。その一瞬のタイムラグすら惜しい。
どうすればいい。考えろ。
僕の焦りを気にも留めずに、彼女は油で艶めく唇を開いて終わりを宣告する。
「好きです。私と付き合ってください」
そのセリフを皮切りに僕は再び能力を行使した。
どうやら今回はまだ戻れるらしい。ただいつ戻れなくなってもおかしくない。時間を巻き戻しながらも僕は考えるのを止めなかった。
考えろ。考えろ。
蝶に竜巻が起こせるのなら、僕には一体何ができるだろう。
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