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デートの恰好
「お嬢様、昨夜からご機嫌ですね」
軽くお昼をすませて部屋にもどろうとしたとき、ミンがシャツをもってきてくれた。
「えっ、そ、そうかしら?」
ごまかすようにシャツをひろげてみた。
うん。すこしみじかくなっているけど、これならちゃんと着れる。
「ありがとう、ミン。ところで、ミンは侯爵様をみたことがある?」
「侯爵様?ライオット侯爵様のことですか。ええ。王宮でもお見かけしましたし、こちらでも。何度かお料理をつくりにいったことがあるんですよ」
きけば、ライオット家の使用人は老夫婦だけで、どちらも引退してしまったとか。その老夫婦とミン夫婦は友人で、老夫婦からときどきは様子をみてほしい、と頼まれたらしい。
もともとミンもラスカもすっごく人がいい。
二人で訪れ、侯爵の身の回りのお世話をしているのだとか。
「じゃあ、馬丁がいるのをしっている?」
「馬丁?しりませんが。すくなくともこのまえ訪れたときには、いかなる使用人もいなかったはずです。どうかなさったんですか?」
「い、いえ。なんでもないの。お昼から、また散歩をしてくるわね。大丈夫。今日は早くかえってくるから」
「はい。お気をつけて」
ミンにシャツのお礼をいうと、部屋に戻った。
なにを着てゆくか、いろいろ悩んでしまった。
メイドといった以上、乗馬ズボンはまずいわよね。
でも、それ以前にメイドが昼日中に自由時間がある?
今日は休みってことにする?
それをいうなら、かれだってそうよね。
馬丁が、昼日中に自由時間がある?
というよりか、昨夜はかれが乗っていて振り落とされたと思っていたけど、かんがえてみたらあの白馬はかなりの名馬だわ。それこそ、王族や侯爵公爵クラスしか手に入れることのできないほどの馬よ。
侯爵様の馬だとして、馬丁のかれが乗っていたというのかしら。
だとすれば、こっそり乗っていて事故にあったのかしらね。
やだやだ。かんがえたってわかるわけがない。
それに、服だってかんがえるのが面倒だわ。
どうせ、ご令嬢が着るようなドレスはもってきていないし、ましてやメイドが着るような清楚な服ももっていない。
そもそもズボンしかもっていない。
というわけで、結局ズボンにシャツにした。
さすがにシャツは長いシャツにして、その上からチョッキを羽織ることにした。
うーん。どうみてもこれは乗馬するという服装ね。
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