白馬と黒馬

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白馬と黒馬

「きみとわたしたちはいっしょの恰好だ」 「そうだよ、ミナ。気にする必要なんてないよ」  ああ、だめ。二人がきらきらしすぎている。  そのとき、わたしの婚約者のテリーも侯爵子息だった、いえ侯爵子息だということを思いだした。  それから、一度もお屋敷を訪れたこともない。  さらには、テリーはちっともキラキラしていないことも。  キラキラどころかウジウジとろとろしている。  この差はいったいなにかしら? 「恰好のことがクリア出来たら、招待を受けてくれるね?」  侯爵様にそこまでいわれたら、これ以上拒めない。かえって失礼になってしまう。 「はい。よろこんでお受けいたします」  思わず答えていた。  それから、侯爵様のお屋敷へ向かった。    立派な門をくぐって広い庭をあるいていると、お屋敷の西側におおきな厩がみえてきた。そのまえには、いくつもの馬場がある。  その馬場の一つに黒馬が一頭たたずみ、こちらをみている。  白馬のレウコンがちいさく鼻を鳴らした。  遠目にも、黒馬もレウコンに負けず劣らずの名馬であることがわかる。  侯爵様は、馬がお好きなのかしら?  庭はきれいに整えられてはいるものの、高価な花や木、噴水や彫刻があるわけではない。一方、通常はみえるところに建てない厩をわざと表側に建てている。しかも、かなりおおきい。たぶん、設備も整っているはず。  ということは、侯爵様は馬に力をいれていらっしゃるということね。  そこではっとしてしまった。  わたし、なに目線でみているの?  普通の令嬢なら、もっとちがうところをみるわよね?すくなくとも、馬に注目しないわ。 「侯爵様は、馬がお好きでらっしゃるのですね」  それなのに、馬の話題をふるなんて、わたし、なにをかんがえているの? 「ほう。きみは、どうしてそう思ったのかね?」  侯爵様は、レウコンからおりながら問い返してきた。  レウコンが、わたしに鼻面をおしつけてきた。  じつは、来る途中もかれが何度も鼻面をおしつけてきた。  そのつどバレやしないかとひやひやしてしまった。  レウコンの耳に何度も『やめて』ってささやくのに、かれはやめてくれない。
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