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テリーと再会しちゃった
すると、道の向こうから馬車がやってくることに気がついた。
あの馬車は、ライアット侯爵家の馬車に間違いない。
テリーだわ。
プルルスがいないので、遠乗りにでもいっているんじゃないかって、ミンにきいて探しにきたにちがいない。
「おや、たしかあの紋章はライアット侯爵家の……」
ナダルのつぶやきが、馬蹄にまじってきこえてきた。
同時に侯爵様がレウコンをとめたので、わたしもプルルスをとめざるを得ない。
どうしましょう。二番目に会いたく人だわ。
もちろん、一番目は妹だけど。
ああ、もう。
でも、どうしようもない。まさか、回れ右するわけにもいかないし。
いずれ、どうにかしなきゃならないんだし。逃げてばかりじゃダメよね。
覚悟をきめた。
馬車がとまった。
わたしたちが道をふさいでいるからなのか、それともわたしをみつけたのかはわからない。
ドアがひらいた。だれかがおりてきた。
「なんと……」
「わお」
侯爵様とナダルがつぶやいた。
「なんなの、あれ?」
わたしもつぶやいてしまった。
なんの獣かわからないけど、黒色と白色の縞模様の毛皮を頭からすっぽりかぶっている人が、こちらにあるいてくる。
「マナ、愛しのマナ。探したよ」
フード部分をはずしてあらわれた顔は、まぎれもなくテリーである。
なんかイメージにあるかれより、ずいぶんと憔悴しきっているように思える。
「マナ?」
「マナ?」
侯爵様とナダルが同時にわたしをみた。
そうだった。わたしはミナであると同時に、マナなんだ。
まったくもう。ごまかしやいいわけはできそうにない。
だから、にっこり笑って肩をすくめた。
これがやけっぱちっていうのかしら?
「きみの姉さんがちょっとおかしくってね」
テリーは、そんなわたしたちの困惑や疑問をよそに、勝手にしゃべりだした。
「自分はマナだっていいだしたんだ。急にミナになってしまって、最初は面白くってミナのふりをしていたけど、ぼくは冷たいし、馬にちかづかないといけないし、貴族子息や令嬢は近寄ってこないし。だから、ふりをしているのがバカバカしくなって、ぼくにわけのわからないことをいいだしたってわけ。だけど、これまでとちがうのはすっごく情熱的で、それはもう情熱的すぎて、ぼくも驚いている。彼女を見直しはしているんだけど、彼女が情熱的すぎてちょっと体を壊してしまった」
ちょっ……。
一方的にしゃべるテリーをみながら、なにをいっているのかわからないでいた。
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