王都に戻ります

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王都に戻ります

「ごめんなさい……」  そう謝りかけたとき、わたしの手を握るナダルの手に力がこもった。 「謝る必要なんてなにもないさ。それよりも、きみがどれだけ不安で寂しかったかということをかんがえると、胸が痛くなってしまう」  ナダルのほうに体ごと向くと、かれの真摯な顔がわたしをじっとみている。 「ナダルのいうとおりだよ、ミナ。わたしたちは、きみのいうことを信じている。その上できいてほしい。わたしは、いまここにいるきみのことを、その、なんだ、そう気に入っている。過去のきみのことではない。いまのきみだ」  侯爵様もまた、真摯な表情でわたしをみつめている。 「セレス様のいうとおり。ぼくもそうだよ。あの夜、レウコンから振り落とされたぼくを助けてくれてから、いままでのきみのことを、あの、その、そう大親友、大親友だと思っている」  ナダルの手がとってもあたたかい。 「侯爵様、ナダル、ありがとう。そのお気持ちが、わたしに勇気をあたえてくれます。これで、心おきなく王都にもどれます」 「心おきなく王都にもどらなくってもいい」 「心おきなく王都にもどらなくってもいいじゃないか」  二人でいっせいに叫んだので驚いてしまった。 「きみを一人でもどらせるのは……。そうだ、ぼくももどる。うん。ぼくもいく」 「な、なんだって?ナダル、きみが?ついこの間まで、まだもどらないと……」 「セレス様、ミナの話をきいたでしょう?あの胸くそ悪いライオット侯爵子息のこともだけど、ミナの妹?っていうか姉、どっちでもいい、とにかく、なにをされるかわからない。護衛が必要だよ」 「ちょっとまて、ナダル。いまのはわざとか?ライオットではない。ライアットだ。ライオット家に人の婚約者を寝取ったり、遺産を狙ったりするような者はいない」 「あ……、ははは、バレました?」 「まったく」  あいかわらずの二人のやりとりに、また笑みをこぼしてしまった。
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