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メイフォード家の屋敷へ
「ミナ、どうしたんだい?」
わたしの視線に気がついたのか、ナダルがこちらを向いた。
「つかれたんだろう。とりあえず、休んだらいいよ」
侯爵様がいってくれた。
「ええ、そうします」
すでに部屋は教えてもらっている。二人に微笑みかけると、居間をでた。
割り当てられている部屋にはいかず、そのまま裏口からでて厩からプルルス連れだした。
レウコンとメランには、静かにするようお願いするのを忘れない。
それから、プルルスにまたがって屋敷をでた。
自分の屋敷に向かって、夜の王都を駆けた。
「ブルルルル」
屋敷の門のまえまでくると、プルルスが急停止した。すると、首を左右に激しく振りはじめた。
「プルルス、どうしたの?いやなのね」
プルルスは、屋敷に潜んでいるだろう大勢の人の気配に怯えているにちがいない。
仕方なしにかれから降りた。
「ここでまっていて。それで、わたしになにかあったら、あなたは逃げなさい。いくらなんでもあなたまで捕まることはないでしょうけど、乱暴なことをされてはいけないから」
「ブルル」
首を振るのをやめ、かれはわたしを真正面からみすえている。
両耳が激しく動いている。
「ええ、わかっているわ。いっても捕まるだけってね。それでもやはりいかなきゃ。妹と、マナと話をしなくちゃいけないから」
かれの鼻面をなでてから、わたしは門をくぐった。
プルルスは、距離をおいてとぼとぼついてくる。馬蹄の音一つさせないのは、かれなりに用心をしているのね。
やはり、屋敷には大勢がまちかまえている。
灯が煌々と灯り、人の影がいくつも揺らめいている。
執事やメイドたちのほとんどは、どうなってしまったんでしょう。
もしかしたら、使用人たちかもしれない。
でもまぁ、使用人たちがこの時間帯に居間やエントランスでウロウロするわけはないわよね。
もっとも、妹が夜会でも催し、大勢を招いているのなら別だけど。
さあ、いくのよ。
侯爵様とナダルに勇気をもらっている。
それをいまこそいかさなくっちゃ。
深呼吸を二度、三度と繰り返すと、しだいに緊張がおさまってくる、気がする。
もういいわ。なるようになる。
暴れ馬とはじめて会うよりずっとずっとましなはずよ。
玄関のドアに手をかけようとしたところで、それが音高くひらいた。
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