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わたしってなんかビミョー
その妹の取り乱した姿を目の当たりにして、中身はわたしじゃないとはいえ外見はわたしだから、みていてすっごくビミョーな気持ちになってしまった。
「お役人の皆さん、あのあばずれの仲間とわたしの元婚約者のいうことなど、まさか信じないですわよね?」
それから妹は、がらっと声と態度をかえて役人たちに媚びをうりはじめた。
わめきまくっている姿もビミョーだけど、媚びをうる姿はもっとビミョーだわ。
「そ、その女はおかしいんだ」
役人たちにとりおさえられながら、テリーまでわめきはじめた。
「自分のことを妹のマナだっていったりして、どこからどうみてもミナだっていうのに、マナになりきったりとおかしなことばかりしていた。彼女は、完全におかしくなっている」
妹はほんとうのことをいっているんだけど、だれだって信じられるわけがないわよね。
テリー、あなたとはじめて意見があったみたい。
「だまりなさい、浮気男っ!」
妹がぴしゃりといった。その形相は、さきほど役人たちに媚をうっていたときとはまたがらっとかわっている。
「きみたち、この二人のやりとりをみただけで、ミナ・メイフォードをもっと調べた方がいいとは思わんか?」
「あの、そういうあなたは?」
侯爵様のアドバイスに、役人のなかで一番えらくみえる人が尋ねた。
それもそうよね。忽然とあらわれて意見するんですもの。だれだって「この男たちはだれだ?」って、不思議に思うわよね。
「これは失礼。わたしは、セレス・ライオット侯爵。いっておくが、そこにいるテリーのライアット侯爵家とはなんの所縁もない」
侯爵様の名のりに、ナダルと顔を見合わせてふいてしまった。
ナダルがライオットとライアットをわざと間違えていったのを、侯爵様は気にされているのね。
たしかに、一字ちがいだから間違いやすいわよね。
「セ、セレス・ライオット侯爵?あの伝説の「竜の騎士」?」
役人たちがさわぎだした。
な、なんですって?
「竜の騎士」って、十年前に起こった戦争でこの国を救った英雄じゃない。
まさか、それがこの侯爵様?
そういえば、剣のことでナダルがいいかけていたことをとめていたわね。
「そんなものは、過去の遺物だ」
侯爵様は、誇るどころか迷惑そうにみえる。
どうしてなのかしら?
「しょ、承知いたしました、「竜の騎士」。きちんと調べ上げ、公正な対応をいたします。おいっ、ミナ・メイフォードとテリー・ライアットを連行しろ」
役人たちは、姿勢を正すと侯爵様に一礼し、すぐさま妹とテリーを引っ立てようとした。
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