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いくつかの出版社と契約をし、フリーのライターをしている私は5年前、その中のひとつの出版社で勤務している佑馬と知り合った。
ごく普通の恋人同士で、流行りの店を見つけては食事をしたり。季節毎にコースを変えてドライブしたり、そんな暮らしがずっと続くと思っていた。
秋の穏やかな日、彼のお気に入りの砂浜で海を見ていると、佑馬が少し暗い声で聞いて来た。
「ねえ、莉那ってスキー出来る?」
「うん、かなり出来る方かな?大学ではスキーサークルだったし……あっ、言ってなかったね。で?冬になったらスキーに連れてってくれるの?」
はしゃぎ気味に聞いた私に、寂しげに微笑み首を横に振った。
「俺、実家に帰らないといけなくなった」
「帰るってどのくらい?」
「ずっと……多分一生」
「えっ!どういう事?」
海に向かって横に座っていた佑馬の腕を引っ張り、私の方を向かせると、私に向かって座り直し、両手で肩に手を乗せ真剣な目で私を見た。
「俺は莉那の仕事を理解している、だから今付いて来てくれとは言えない。でも別れたくない」
佑馬は実家が営んでいるロッジを継がなければならないと話を続けた。
そして二人で出した答えは、私は東京に残り仕事を続ける。そして冬の何ヵ月か佑馬の元に行く。フリーで働く私には出来ない事ではなかった。
それから毎年、佑馬からの「こっちにおいで」の便り、幸せの時間への招待状、雪便りを待っている。
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