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すると、イーザックはふん、と鼻を鳴らした。
「身の程を弁えよ。姉妹揃ってこの私に意見するとはな。よく聞け。私の真実の愛は、アリシアの為だけにあるのだ」
高らかに宣言したイーザックは、アリシアをさらに抱き寄せた。
グラティアは眉をひそめ、唇を噛む。
(クラーラの主張を聞こうともなさらないなんて。以前からクラーラに対して冷たいと感じていたけれど、大勢の目の前でこれはひどすぎる)
だだだっ!
そしてこの状況に耐え切れなかったのか。
渦中のクラーラは、グラティアの横を通ってホールから走り去った。
「クラーラ!」
グラティアは友人たちに会釈をしてから、妹を追いかけたのだった――。
*
*
一方的にクラーラが婚約破棄された翌日。
「グラティア。本当にすまない」
伯爵、つまり父親に呼び出されたグラティアは執務室を訪れた。
館で最も日当たりのいい部屋の奥には、半日でやつれきった父親がいた。
夜会での出来事はあっという間に広がったのだろう。加えて、破棄された婚約の処理。
おずおずとグラティアは尋ねた。
「お父さま。クラーラの様子は……?」
伯爵は首を横に振った。
昨晩は泣き崩れるクラーラをなんとか馬車に乗せて帰ってきたグラティア。
それから、今の今まで妹の姿を見ていない。
すっ、と伯爵がデスクの上に開封された手紙を載せた。
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