わたしたちが追放された理由

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 そこへ、かつて欠片を与えていた老婆が近づいて行く。  足はもう引きずってはいない。  何度も何度もお礼を言って、ルークが両肩に手を置いて語りかけると、ようやく老婆はその場から去った。  眺めているだけなのに、グラティアは泣きそうになっていた。  鼻をすすり、涙が滲まないように気をつけながらルークへと歩いて行く。 「願い事、見つかりました」  珍しくしゃがまないグラティアに、ルークは顔を上げた。  その見た目は、グラティアと同じくらいの年頃まで若返っている。 「返品しないでおいてよかったな」  ルークが微笑む。  かつて深く刻まれていた皺はもうどこにもない、瑞々しく張りのある肌。 「それで、どんな願いだ?」  グラティアは欠片を勢いよく差し出した。 「ルークさま。あなたの存在が消えてしまわないように、願います」  ははっ、とルークは乾いた笑いで返した。  少しだけ困ったように、長い髪の毛にくしゃりと手をやった。 「俺のことを俺に願うのか。やはり、お前は変わった人間だな」 「はぐらかさないでください。青い髪の神さまの物語を、教えてもらいました」  どうしても潤んでしまう瞳を見ていられなくなったのか、ルークは視線を己の手のひらへ落とした。 「このところ、張り切って人間の願いを叶えすぎた気はしている」 「真実なのですね。消えてしまう、というのは」
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