わたしたちが追放された理由

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 すると、ルークの力が強くなる。 (振りほどけない。ううん。……このままでいたい。これは……この気持ちは) 「君に会えないと、苦しい。名前を呼ばれると、どうしようもない気持ちになる」 「ルークさま……?」 「……これは、何だ」  人間が、神に恋するなんてありえない。  かつてのグラティアはそう思っていた。  しかし今のグラティアは、はっきりと想いを自覚していた。 (わたしはルークさまのことが、好き……)  そして、ルークも、おそらくは。  どれだけの時間が経っただろうか。  グラティアは、意を決して口を開いた。 「……願い事。少しだけ変えて、もう一度願ってもいいでしょうか」 「何だ」 「ルークさまのお傍に、いたいです」  するとルークは力を緩め、そのままグラティアの体をくるりと自分へ向けた。  ダークグレーの瞳にグラティアの姿がくっきりと映る。 「君が老いて死ぬのが先か。俺がすべての力を使い果たして消滅するのが先か。そんなの、神にだって分からない。だからこそ」  グラティアの頬を、涙が伝う。 「君の願いは、俺と君とで叶えよう」  泣きながら、グラティアは笑顔を浮かべる。  そして、はい、と頷いた。  ――やがて。  公爵(シュレヒト)家は辺境伯(ウィルバー)の目論見通り、衰退していくこととなる。  クラーラはそんなウィルバーのもとへ嫁ぎ、仲睦まじい家庭を築いた。  また、グラティアは古代文字の研究家として広く名を知られるようになる。  辺境領にまつわる神話を紐解き、晩年は神学者としても歴史に名を残した。  見る者が見れば、彼女の傍らには常に青い髪の神がいたと言われている。  王都から追放された伯爵令嬢と、天界から追放された神。  ふたりの物語を歌い継ぐ吟遊詩人は、ひときわ人気を博すのだった。
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