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「公爵家から文が届いた」
「公爵家から……?」
「今回の婚約破棄に当たり、クラーラを王都から追放するようにと」
「なんですって。こちらの言い分も聞かずに、一方的すぎやしませんか。そもそもクラーラが他人へ嫌がらせをするだなんて考えられません」
グラティアは伯爵に詰め寄った。
恐らく険しい顔つきになっていたのだろう。
伯爵は戸惑うように視線を逸らし、重たい溜め息を吐き出した。
「私だってクラーラの無罪は信じている。しかし」
それなら、と言いかけたグラティアを制して、伯爵が言葉を続ける。
「公爵がたいそうお怒りになっているのだ。今まで散々よくしてやったのにどういうことだ、と。そしてクラーラだけではなく、グラティア」
「はい」
グラティアは伯爵から離れて、背筋を伸ばした。
「娘ふたりを王都から出さねば、伯爵家を事実上潰すと言ってきている」
「ありえませんわ……」
グラティアは倒れそうになるのを、なんとか堪えた。
反論したことで公爵家の怒りを買ってしまったという事実は事実だ。
(ですが、それだけで? 見せしめということ?)
「公爵家には逆らえない。グラティア、お前の婚約も当然ながら白紙になった」
「そんな」
「ふたりにはこれから北方にある辺境伯領へ向かってもらう」
母親の遠縁にあたる辺境伯。
幼い頃、一度だけ会った記憶を掘り起こす。
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