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「クラーラ。君との婚約はこの場をもって破棄する」
公爵家主催の華やかな夜会。
その最中の、出来事だった。
伯爵令嬢のグラティアは、遠くから聞こえてきた突然の婚約破棄に耳を疑った。
それまで友人たちと談笑していたが、不穏な宣言の方向へ視線を向ける。
「君はアリシアに嫌がらせをしていたようだな。そんな人間だとは思わなかった」
よく通る声の主は、公爵令息のイーザック。
そして、クラーラというのは、グラティアの妹なのだ。
和やかだった夜会の空気は一変して、今や人々の関心はイーザックたちに注がれていた。
クラーラの婚約相手であるイーザック・シュレヒトは横柄さでよく知られている。ところが公爵家の力の強さのせいで、誰も物申すことができない。
一方で淡いピンクのドレスがよく似合う、小柄でぽっちゃりとしたクラーラ。
おっとりとした性格で、イーザックに冷たくあしらわれてきた。
なんとか彼に好かれようとがんばるものの、うまくいっていないことをグラティアはよく知っている。
「ア……アリシアさんに嫌がらせなんて、したことはございません……!」
クラーラの、普段はほんのりと紅く染まっている頬が色を失っている。
体は小刻みに震えていた。
グラティアとクラーラは、淡い金髪と碧色の瞳の持ち主だ。
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