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所長登場
「至急、所長に会って頂くことになりました」
「検査をしなくていいのですか?」
「詳しくは所長から聞いてください。私からは申し上げることができません」
男が僕に頭を下げた後、所長室に案内された。
男に連れられながら迷路のように複雑な館内を歩いて所長室まで行った。
「ここに所長がいらっしゃいます」
扉の前まで案内されて、ノックすると、どうぞと女性の透き通る声が聞こえた。
部屋の中に入ると、綺麗な女性が静かに佇んでいた。
「初めまして、ようこそ私の館へ、所長の風下です。現在世界で最も有名な人に会えて光栄だよ、葉山壮一君」
「僕が世界で最も有名なのですか?」
珍しい苗字だと思いながら、どこかで聞いたことがあると記憶の糸を辿って思い出そうとしたけどできなかった。
所長の後ろの壁に設置されている大画面モニターに視線を向けた。
モニターには複数のチャンネルが映っていて全てのチャンネルに僕が映っていた。
空を飛んだ瞬間から情報が世界に拡散して、一夜にして時の人になったと説明された。
モニターから目を逸らして所長を見ると、大きな目を少し緩ませて、艶やかな唇から声が溢れた。
「君と話したいと願っていたら、こんなにも早く願いが叶うとは思わなかったよ。政府の権力は想像を超えるものだね」
「警察の方に研究室に連れて来られるとは思いませんでした」
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