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事実と代償
所長が僕の姿を上から下まで舐めるように見た。
「部下からの報告で君に行うはずの多くの質問をする前に、全く違う質問をしなければいけなくなった」
「どういうことですか?」
所長が口角を上げて白い歯を見せると不気味な笑みを浮かべた。
「君は何才だ?」
とっくにそんなことは調べて分かっていると思っていた僕は言葉に詰まった。
18才と言おうとした所で手鏡を渡されて、自分の顔を見ると、そこで僕は驚愕の事実を知った。
顔はたるんでいて締まりがなく、ハリやツヤが全くなくて、目尻や口元、眉間までも皺ができていた。
髪が染色したように混じり気のない白髪になっていた。
手鏡を離して遠くから見ると、お腹が弛んでいて、体全体から気力が抜け落ちているように見えた。
所長が僕の反応を見て嬉しそうだった。
「部下からの調査報告書や昨日のテレビの様子から飛ぶ前は18才なのだろうと思う。だが一夜明けて君の姿を前にして見ると50代後半に老けているね」
「1日で40才ぐらい年をとったということですか?」
「おそらくそういうことだろう。空中飛行の代償とでもいうべきものかな」
「代償ですか」
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