事実と代償

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「私が気にしているのは、君が眠ったらまた40才近く年を取ってしまうのではないかということだ。せっかく空を飛んで走る人間に会えたのに数日で命が尽きてしまうとしたら悲しい」  所長が嘆きながら話した。 「君の寿命がわからないが、次に40才年を取ってしまった場合、死んでいる可能性も考慮しなければいけない」 「眠ったら死んでいるかもしれないなんて……」 「そうならないことを私は願っている。これから非常に重要な質問を二つする。一つ目、君は自分の意志で、自由自在に飛ぶことができるのか?」 「できません。僕の意志ではなく、僕が進みたい方向に全く進みませんでした」  所長が深く安堵して息をついた。 「その言葉を聞いて、心の底から安心を感じた。空を飛ぶ青年が現れたと聞いて、私はそのことを危惧していた」 「もし僕が自由に空を飛べたらそんなにまずいのですか?」  所長が急に真剣な顔つきになった、僕を飲み込むかのような迫力があった。 「世界が激変する。早い話が軍事転用される可能性が極めて高い」 「軍事転用?」 「空から降ってくる無数の兵隊が、電車の速度で襲ってくるなんて考えただけで背筋が凍る」  本当に背筋が冷たくなったように、所長は自分の身体を両腕で温めるように包んだ。
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