事実と代償

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「二つ目の質問だ。これは経験から来る直感なのだが、一昨日起きた数千年に一度の流星群を君は見たか?」 「流星群、見ましたよ。とても綺麗でした」 「その時に何か不可解な出来事はなかったかい?」  僕は頭を捻って思い出すように話した。 「あっ、星が空から落ちてきて、僕の体に入って胸の辺りが温かく光りました。でも、夜遅くて、寝ぼけていたんだと思います」  所長が高揚して、僕の両肩を掴むと目を輝かせていた。 「それが空を飛んだ原因に違いない。天体が通常とは異なる時、ましてや数千年に一度の流星群ともなれば異常事態は起こる可能性が高い」  そんなことが実際にあるのだろうかと疑問に思った。 「でも、流星群を見た人は他にもたくさんいると思います」 「君以外には、空を飛んだという話はない。素敵な言い方をすれば、君は星に選ばれた人間だ。残念な言い方をすれば、突然40才年を取る哀れな人間だ」  僕は素敵な方だけ心にしまうことにした。
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