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朗報
「君にとっての朗報もある。本来なら今日から検査のはずだったが、いつまでか知っているかね」
「いつまでかは聞いていませんでしたね。一週間ぐらいですか」
所長が頬を緩めて優しく微笑みながら、心臓に直接響くような口調で話した。
「君が死ぬまでだよ」
その言葉を聞いて、血の気が引いて後ずさりした。
優しい微笑みが不気味に思えて、自分という存在が研究室という暗闇に吸い込まれるように感じた。
「君は一週間ぐらいと言ったが、考えが甘すぎるよ。空を電車の速度で走る人間を一週間で返すなんてありえないね」
「僕は一生、この館から出られないのですか?」
所長はかぶりを振って嬉しそうに笑みを浮かべた。
「さっき朗報と言っただろう。私の権限で、この検査は行われないことになった」
僕は人生を救われたと思って、頭を下げて深く感謝した。
「所長のおかげで僕は助かりました。ありがとうございます」
「頭を上げなさい。私は君に感謝してもらうためにしたわけじゃない。悠長な検査をするよりも、迅速な措置を講じる必要があったからだ」
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