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地上180メートルの窮地
モニター内の5箇所のチャンネルで、タワーマンションで事故が起こったことを放送していた。
マイクを持ったリポーターが上空のヘリからの映像を映し出しながら鬼気迫る表情で伝えた。
「超高層マンションの51階、地上180メートルの高さのフロアで小学生になったばかりの子供達を集めて歓迎会が開かれていたようです。そこに、ヘリコプターが何らかの誤作動でマンションの窓に激突した模様です」
なっちゃんがマンションの割れた窓側にいて、反対側にいる人々が安全な所に避難させようとしているのが見えた。
「少女が窓から反対側に避難しようとしていますが、プロペラの残骸に絡まり、強風もあって動けないようです。現在の上空の気流は風が激しく、いつ少女が飛ばされるかわからない非常に緊迫した状況です」
別のチャンネルでは報道のヘリが近付こうと試みたけど、激突したヘリと窓ガラスの破損に接触して二次被害を招く可能性があり、なっちゃんを助けることができなかった。
所長がモニターを見ている僕の顔を覗き込んだ。
「もしかして、この少女の知り合いかな?」
「なっちゃんは怪我をしてまで、母の形見のハンカチを届けてくれた大事な人なんです」
「ハンカチ一枚を届けてくれたお礼にこの少女を助けたいと思うのかい?」
「所長に僕の気持ちがわからなくても、僕は行きます」
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