空を走る

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空を走る

 走っている時に昨日の流星群の映像が頭の中を駆け巡った。  いつまでも眺めていたくなるような、夜空に輝く星々の饗宴だった。  走り始めて数分で息が乱れて、体が熱を帯びたように熱くなった。  スマホで時間を確かめる余裕はなかったけど、全力で走っても間に合わないように思えてきた。  僕は足がもつれて転びそうになりながらも、それでも走った。  しばらく走っていると異変が起こって、体が軽くなっていることに気づいた。  そして足が地面から離れて宙に浮き、体が斜め上に上昇して空に近づいて行った。  体が浮遊感に包まれて自分の身に起こっていることに理解が追いつかなかった。 「えっ、えっ、どういうこと?」  思わず洩れた独り言は風に消えて、僕の体は空に向かって進んでいた。  ふわふわ浮いて地面はないのに、足は勝手に動いて僕は空を走っていた。  足を自分で動かそうとしたり、方向を変えようとしても全く変わらなかった。
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