近所のなっちゃん

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 僕の気持ちなど関係なく高度は更に上がり、足の速度は電車と同じぐらいになった。  もはや自分の足とは思えないほど速く、ひたすら回転する機械のように思った。  駅舎を遥かに越えた高さまで上がると、この高さから落ちたら命がないなと思って、体も心も震えた。  電車を眼下に望みながら、電車に追随するように僕の体は動いた。  足が摩擦で火が出そうなほど回転していた。  駅舎から離れて、電車の上を旋回するドローンのように僕は飛行した。  電車が曲がる時にこのまま僕も曲がって大学に進むだろうと思っていた。  でも僕の気持ちに反して体は曲がらず直進した。 「えっ、電車は曲がったよ?」  電車の通りに進むと思っていた僕は、このままどこに行ってしまうのだろうと途方に暮れた。  しばらく空中を走ると大学への最短ルートを走っているのではないかと想像がついた。  遠くに大学の校舎が見えて、このまま進めば間に合うかもしれないと思った。  ここからどうやって降りたらいいのだろうと頭の中で疑問が浮かんだ。  大学の正門の前で急に速度が緩まり、同時に高度も下がっていった。  僕は空から降ってきた隕石のように、講義を受ける校舎の2階の教室の前に降り立った。
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