Strawberry Drops

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「大丈夫。朝歩いてくるの気持ちいいから」  正直朝は苦手。だけどシュウさんに会えるなら、早起きした甲斐があったと顔に書いてあったのかもしれない。彼はすぐに瞳をふにゃりと細めて微笑んだ。その頃には私に馴染んでしまったシュウさんの笑顔。見るたびに好きだと思うのに、心の内側にある小さな紐をきゅっと引っ張られたように、せつなさも一緒に感じていた。 「それじゃこっちきて。早速始めようか」  そう言って背中を向けたシュウさん。やっぱりうなじが綺麗。でも触れられないから。かわりに指先でちょんとふざけて背中をつっついた。なに? と笑って振り返ったシュウさんになんでもないと微笑み返したあと、どさくさに紛れてジーンズの後ろポケットに、いつものいたずら。いちごの飴を忍ばせたことを、シュウさんは気づいていなかった。 「さてと」  大きなガラス張りの窓から朝日が差しこむ空間。気持ちよさそうに鎮座するセットチェア。シャンプーをした後、シュウさんはそこに私を座らせてからカットクロスをつけた。  他には客もスタッフも誰ももいなかったから、静まり返った空気が私達を包んでいた。シュウさんを独り占めできる贅沢な時間。思わずほおと吐息が溢れたらシュウさんが私の顔を覗き込んだ。 「朝早く呼び出したから疲れちゃった?」  欠伸だと思われたかもしれないと思ってすぐに首を振った。 「1限目の授業とおなじような時間だから全然大丈夫。でも珍しいね。朝にカットモデルなんて」  ほんの少し。シュウさんは考えるような表情を浮かべたあとすぐに微笑んだ。   「うん、今日は朝じゃないとダメだったから助かったよ」  
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