晃司の龍

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晃司の龍

変な夢を見た 誰かと二人きりで私は縋るように 相手に訴えてる内容 「もう生きてるのが辛い」 必死に訴えている自分 夢は抑圧や願望を、そして無意識の自我を 現実では経験できない事を夢の中でも見て、 そして経験している 生体器官が起きている三次元の現実世界でも 寝ている時、あの世に里帰りしている時も魂は貪欲なままに、この世でしか経験できない事を貪り希求している 冬の寒さは生命力を脆弱にする 特に躰が弱っている時には堪える 目に映るものしか道筋がなく 間違った道を選ぼうとする時は 守護霊連合から苦難を与えられて 無言の否定をされ そっちじゃないよと拒否される だからと云って決して正しい道を示してくれる訳ではない 自分で回答を見つけなさいという事か、 私の人生は回り道の連続だった 苦難の連続であった それがこの世に生きてる私に対しての 肉眼で見えないあの世の世界からの回答なのか、 姿は見えないし声も聞こえないから右往左往するしかない私 肉体舟の老朽化と、ままならないこの世の辛苦 この世は諸行無常、四苦八苦 魂が望んでいるのは苦も幸も関係なく貪欲に求めているのは経験の事象のみ この現象界しかできないからと 様々なアトラクションを用意して魂にこの世の経験をさせる。 多くの魂から選ばれてこの世に生まれ出た精鋭でもある と云われる。 が、そんな事は今、この世で生きてる私には覚えはない 死に急がなくてもいずれはあの世に帰る時が来る この世のアトラクションは必ず閉園の時間となり 実在界に帰る時はこの肉体舟を脱ぎ捨てて 魂本来の姿、光そのものになり帰る事になる 「晃司、おはよう、まだ寝てるの」 妻の声で起こされた 枕上の目覚まし時計を無意識のうちに止めて 私は二度寝したらしい 寝室は妻の配慮でエアコンが適切な温度に設定されており 丁度良い感じに暖められている 妻はもう既に私が会社に持っていく弁当を作り終わっている リビングには植物が置いてあり 綺麗に整理整頓されて華のある暖かい空間である 私は朝は先ず顔も洗わず珈琲を飲む事から始める 虚ろな頭を覚醒させる為にだ 窓の外に映る風景 冬の寒気の霜と鳥の囀り 優しい妻との二人暮らし 子供は居ないが平和な家庭 二人で生活するには現状では特に困る事もない経済状態 こんなコロナ禍でも困窮しない安定した仕事を持っている現実 私は何も困ってはいない 困った事は何も起こらない 確かに若さと共に 無いものも私には多くある たとえば決定的に欠如しているのは この世で上手く生きていく為の処世術 多くの普通の人が当然に持ち得る能力が 発達障害の私には致命的に欠如している そして私には物欲というものが 不思議な事に子供の時から無い いや子供の時は私も人並みに欲はあった 玩具が欲しいとか漫画本が欲しいなどであるが 高校生の頃からであろうか 私の欲望は物欲や彼女が欲しいから 「早く死にたい」という内容に変わってきたのだ 私という存在がこの世では余りにも不適応過ぎる 生きるのが向いて無さ過ぎる事 嫌でも人間関係にて痛感させられる事象の数々、 なぜ私はこの世に生まれてきたのか 苦しむ為に生まれてきたのか 嗚呼、早くあの世に帰りたい 鏡に映る自分の顔 そんな事を考えているうちに 私はもう50歳を過ぎる年齢になる それでもまだ生きている 図々しく生きている 脆弱だと思って生きてきたのは単なる私の思い過ごしか だけど抗不安剤と睡眠薬は手放せない 躰も年々ガタがきている 呼吸が溜息と呻き声に変わってきている 苦しみながら生きてきたのに こうやって結婚もできて 子供は居ないが人並みの幸せも得ている だけども毎朝、起きるのが辛い 今日も生きなければいけないのか 自分でも自覚はあるが妻にも私は鬱だと指摘された 何気なく家を出る前に観ていたテレビから女子アナの声が流れてくる 目に飛び込んできた映像 女子アナの営業スマイルとトークに騙される所だが これは、、 「今朝、4時頃に静岡県にある富士山に登頂する白装束の一行が見つかり ました。その中にはアイドルグループAKCのメンバーが居るとの情報があり 昨日、ネットにて噂になっていましたが真偽はどうなんでしょうか、」 (どうでもいい事、そんなものは芸能事務所に問い合わせたら解る事だろ) 私は覚醒し始めた頭で女子アナのぶりっ子した質問に対して つまらないツッコミを入れてしまった テレビ画面から映っている早朝の静岡県富士宮 その風景で私には変なものを見えたのである そこに、確かに雲だが、 その雲には龍の顔が映っていた 私は同じようにテレビを見ていた妻に聞いた 「なあ、今さ、龍の顔が映ってなかったか!」 妻は「さあ、そんなの映ってなかったよ」 「晃司はさ、ムー民だから無意識に見たいものが見えたんじゃないの? 早く用意しなきゃ遅刻するよ」妻は微笑しながら優しく返答した。 (そっか、やっぱり妻にも見えなかったのか、) 私はまだ薄暗い中、仕事に行く為に外に出た (嗚呼、寒い、でもあれは自分の願望なんかではない) なぜか確信があった。自分がテレビ画面で見た雲 「あれは龍だ」早朝の町の景色は靄が掛かっており このまま私は幻想の世界に行くような錯覚に墜ちていった
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