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昨年の夏。
灘乃千沙と相良基久による陰謀が明らかになったことで、二名は厳しい処罰を言い渡されることになったのだという。
もちろん、灘乃千沙と泉里の婚約は白紙へ。
両家の当主が会談を重ねた結果、今回の件における遺恨は水に流し、今後も変わらぬ付き合いをしていこう、ということで話は落ち着いたようだった。
そうして事件が収束した後――舞衣は女中をやめ、泉里と正式に婚約をすることになった。
泉里とともに、清充のところへ結婚の報告へ行った時の記憶は、今でもありありと思い出せる。
(あの時は、緊張したけれど……泉里さまが、わたしを愛していると言ってくださったことが、とても嬉しかった……)
泉里と並び、深々と頭を下げると、清充はしばらくして「顔を上げなさい」と命じてきた。
清充は舞衣をしばらく静かに見つめていたけれど、やがてゆっくりと目元をほころばせて微笑んだ。
『お前は、澄んだよい目をしている。美しくて、純粋で――私の妻に、よく似ている』
清充の妻――泉里にとっては母にあたる女性がすでに他界していることは、舞衣も邸に来たばかりの頃から知っていた。
遠い昔の思い出を懐かしむように、清充はゆっくりと語った。
『妻と出会ったのは、気まぐれに京都を旅した時だったんだよ。ちょうど、任務に失敗して自棄を起こしていた時だったな。彼女は身分など関係なく、私を支え、勇気づけてくれた……』
『だ、旦那さま……!?』
思わず驚いて声を上げてしまったのは、清充が舞衣に頭を下げたからだ。
『私は泉里がお前を伴侶として選んだことを、誇りに思っている。……どうかこれからも、息子を支えてやってほしい』
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