2.再会

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 泉里にとって、家族との再会は三年ぶりだった。  にもかかわらず、舞衣は自分の不注意で、家族水入らずの時間を台なしにしてしまったのだ。  頭を下げたまま、舞衣は唇をかみしめた。  謝るくらいでは、決して許されない。  ……きっと泉里も、舞衣を心配する以上に、失望していたのだろう。  その証拠に、いつまで経っても、泉里からは注意や叱咤の言葉一つ、返ってこなかった。  こわごわと顔を上げてみれば―― (あ――……)  もうそこに、泉里はいなかった。  あたりを見回せば、庭の向こうに、急ぎ足で去っていく泉里の後ろ姿が見えた。 (呆れられてしまったんだわ)  奈落に落ちたような心地だった。 (……わたし、何をやってるんだろう)  ぎゅっと目をつむり、震える息を吐き出す。  ……けれど、泉里が舞衣に呆れていなくなったのではないことは、すぐに明らかになる。  泉里が再び姿を見せたのは、仕事に戻らないといけないと思い、舞衣が立ち上がろうとした時のことだった。  その手には、塗り薬の入った小さな瓶があった。 「待たせてしまって悪かったな。腕を見せてくれるか」 「……え?」  少しだけ赤みの残る腕をそっと取られ、薬を塗られる。  それはまるで、繊細(せんさい)な花や宝石でも扱うような触れ方だった。  驚いて顔を上げれば、泉里は(ふところ)から白いハンカチーフを取り出しているところだった。  舞衣が止める暇もなく、泉里はその上品な刺繍(ししゅう)縁取(ふちど)られたきれいなハンカチーフで、舞衣のやけどをおおっていく。
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