2.再会

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 もう遅いとは思うけれど、それでも舞衣は声に出した。 「あの……だめです。もったいないです……せっかくきれいなのに」 「ん? このハンカチーフのことか? なら気にしなくていい。本当だったら包帯があればと思ったんだが、取りに行くのに時間がかかってしまうから……よし、ここで結んで……これでいいだろう。きつくないか」 「だ、大丈夫です。その……本当に、ありがとうございました」  泉里は邸の令息で、舞衣はみすぼらしい女中だ。  なのにここまで連れてきてもらったばかりでなく、治療までさせてしまった。  あまりに居たたまれなくて、舞衣はその場に縮こまってしまう。  けれど、泉里はそんな舞衣の様子に、舞衣が傷の痛みを我慢しているとでも思ったのか。  憂いを帯びていた眼差しで、舞衣の腕の、やけどをした箇所を見つめながら言ってくる。 「すまないな、もっと早く助けられていれば、お前にやけどをさせるようなことにはならなかっただろうに」 「……っ! いいえ! わたしの不注意だったんです。わたしが、もっと気をつけていれば、こんなことには」  そう、言いかけて。  直後、舞衣ははっと思い至った。  熱湯が飛び散ったのは、本当に舞衣の腕だけだろうか。  あの時、舞衣を抱きとめた泉里に、かかってはいなかったか―― (……わたし、どうして気づかなかったの!?)  舞衣はさあっと顔を青ざめさせ、泉里を問いただした。 「泉里さま! お怪我は――」 「大丈夫だ、俺には湯はかかっていなかったから」 「本当、ですか? 本当に……?」  安心したせいで力が抜けて、舞衣はその場にへたり込んだ。  自分が怪我をするのはかまわない。  けれど、もし自分のせいで泉里にやけどをさせてしまっていたら、舞衣は悔やんでも悔やみきれなかっただろう。
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