2.再会

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「よかった……本当に。泉里さまに、お怪我がなくて……」  心の底から安堵が込み上げてくる。  ほっとして胸に手を置く舞衣に、泉里は一瞬驚いたように目を見開いていたが、舞衣は気づかない。 「……舞衣」  やがて、泉里は舞衣の手をとる。 (あ……)  ほんの少し、触れられただけ。  それだけで、さらに顔が赤くなるのがはっきりとわかった。  水に長く(ひた)したせいで、舞衣の手は冷え切っていた。そのせいもあってか、泉里の手から伝わる体温が、異様に熱く感じられた。  また頭が真っ白になって、つい、しどろもどろになってしまう。 「あ、あのあの……そのっ……」 「ありがとう、舞衣。心配してくれたのか。お前のそういうところは、ちっとも変わっていないな。自分が大変な時でも、いつも他人を思いやってばかりいる」  そこでようやく、舞衣は気づいた。 (泉里さま、わたしの名前を……)  泉里と前に言葉を交わしたのは、もう三年も前だ。  その間、舞衣はずっと泉里を想い続けていた。  けれど、泉里はきっと、舞衣のことなんて忘れてしまっているのではないか。  そう、思っていたのに。 「わたしのこと……覚えていてくださったんですか?」  それから少しして、舞衣ははっと口を押さえた。 (……っ! わたし、今、声に出して……!)  心の中の声のつもりだった。  なのに口にしてしまっていたことに気づいて、舞衣はうろたえる。  舞衣は、ただの女中にすぎない。  三年前に言葉のやり取りがあったとはいえ、一介の女中が「わたしを覚えていたか」なんて、おこがましい問いではないのか。
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