1.初恋

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 悲しくなって、じわり、と涙がにじんだ。 (だめ……。泣いてしまったら、だめ……)  泣く資格なんてないのに。  必死に涙をこらえようと、うつむいて目をとじる。  ただでさえ役立たずで迷惑をかけているのに、泣いたらもっと困らせてしまう。 「……役立たず、か。誰がお前にそんなことを言ったんだ?」 「……え?」  ゆっくりと目を開けた。  そこには、舞衣の背丈に合わせて、かがみ込む泉里の姿があった。  まばたきすると、ほろりと涙がこぼれ落ちる。  ……絶対に、気づかれてしまったはずだった。  なのに、泉里は舞衣の涙の理由を聞いてはこなかった。  彼はまっすぐに舞衣を見つめて、舞衣が答えるのを待っていてくれている。 「……昔、から……なんです。昔から……みんなに、言われてきたから。だから、わたし……みんなよりできないから、その分、頑張らなくちゃって……」  こらえることができなかった。  泣いてはいけない。  早く泣き止まないと。  そう思うほどに、涙はあふれてきてしまう。  そんな自分が嫌で、悲しくて、嗚咽が込み上げるのをおさえられない。 (泉里さまは、きっと困っていらっしゃる。こんな私なんて、ここからいなくなってしまいたい……消えてしまいたい……) 「……ご、ごめんなさっ……、あの、大丈夫、です。わ、わたし……だい、じょうぶですから……っ」  途中、しゃくりあげながらも、やっとの思いで口にして、泉里の前から離れようとした時だった。
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