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「今までずっと、つらくて苦しかったんだな。もっと早く声をかけてやれずに、すまなかった」
「せ……んり、さま」
「無理をするな。苦しい時は我慢しなくていい。好きなだけ泣いてしまえ」
(あ……)
身体中が熱くてたまらなかった。
のどを震わせ、鼻の奥を突き刺して、目のふちからとめどなく込み上げてくるものをおさえられない。
ああ、どうして。
どうしてこの人は。
舞衣が心の底で、ずっとほしかった言葉をくれるのだろう――。
「ふ……っ、う、うぅ」
「こらえるな。今は俺以外には、誰も見ていないから」
「うっ……あ、ああっ……ああああああ!」
こんなに、乳飲み子の頃にかえったみたいに、思いきり泣いたのはいつ以来だろう。
舞衣が泣いている間ずっと、泉里は舞衣を抱き寄せたままだった。
泣きじゃくる舞衣の背を、少しでも楽になるようにと、何度もさすってくれていた。
その手が、切ないくらいに温かくて。
東の空が白んでいく。
ひとりぼっちの星が、すっかり明るい陽差しに包まれていくまで、舞衣は泣き止むことができなかった――。
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