1.初恋

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「今までずっと、つらくて苦しかったんだな。もっと早く声をかけてやれずに、すまなかった」 「せ……んり、さま」 「無理をするな。苦しい時は我慢しなくていい。好きなだけ泣いてしまえ」 (あ……)  身体中が熱くてたまらなかった。  のどを震わせ、鼻の奥を突き刺して、目のふちからとめどなく込み上げてくるものをおさえられない。  ああ、どうして。  どうしてこの人は。  舞衣が心の底で、ずっとほしかった言葉をくれるのだろう――。 「ふ……っ、う、うぅ」 「こらえるな。今は俺以外には、誰も見ていないから」 「うっ……あ、ああっ……ああああああ!」  こんなに、乳飲み子の頃にかえったみたいに、思いきり泣いたのはいつ以来だろう。  舞衣が泣いている間ずっと、泉里は舞衣を抱き寄せたままだった。  泣きじゃくる舞衣の背を、少しでも楽になるようにと、何度もさすってくれていた。  その手が、切ないくらいに温かくて。  東の空が白んでいく。  ひとりぼっちの星が、すっかり明るい陽差しに包まれていくまで、舞衣は泣き止むことができなかった――。
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