6.縁談

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「そ、んなの……、わたしだって……、わたしだって、恐かったんです……! わたしの……せいで、泉里さまが死んでしまったらと思ったら……怖くて、恐ろしくて……!」  耳元で、泉里が息をのむ気配がする。  ああ、きっと。  お礼も謝罪も何もかも忘れ、衝動のままに感情を吐露する舞衣に、きっと泉里は呆れている。  それでも、叫ばずにはいられなかった。 「方法があるんだったら……何でもいい、怪我したっていい。わたしのことなんか、どうなったっていい……! それよりも、あなたが傷つけられていくのを見ている方が、ずっと、ずっと、つらかったんです……! だから……助けられるのを、じっと待っていられるわけないではありませんか――」  その瞬間、ぐっと頭をつかまれ、顔を泉里の胸に押しつけられる。 (え……?)  それ以上は言うな――と。  言外に伝えるように。  優しくあやすように、泉里は大きな手で舞衣の頭を幾度も()でてくる。  もう、泉里は舞衣に怒りをぶつけることはなかった。  少しかすれているけれど、これまでに聞いたこともないくらいに優しく柔らかな声で、泉里は言った。 「……もういい、わかった。お前の気持ちはもう、充分にわかったから。大声を上げてしまって、すまなかった」 「…………っ」  ……どうして。  必死に引き結んでいた唇から嗚咽(おえつ)がこぼれる。  我慢できない。  どうして、泉里はこんなにも、舞衣に優しいのだろう。  どうして、こんなにも愛おしむように触れてくれるのだろう……?  もう、耐えることはできなかった。  くしゃくしゃにつぶれてしまいそうなほどに、胸が痛くて痛くてたまらない。  舞衣は嗚咽を飲み込みながら手を伸ばして、そっと泉里の胸を押し返した。
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